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フォーラム記事

NATSUMIKO♡
2021年10月30日
In 「少女には向かない職業」
桜庭一樹が好きです。 ライトノベル出身、直木賞作家桜庭一樹、といえば、ライトノベルなら「GOSICK -ゴシック-」純文学なら「私の男」をあげる人が多いと思います。 彼女の魅力は、独特の文体とエログロを含んだ湿っぽい雰囲気なのですが… 個人的には、純文学進出期の、爽やかで少し突飛な設定❨ラノベらしい萌えキャラも❩と、エログロまで行かぬ微かな妖しさが同居する作品が大好きです。 具体的には、「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」「紅朽葉家の伝説」など… その中でも一番好きな作品が、この「少女には向かない職業」です。 「中学二年生の一年間で、あたし、大西葵十三歳は、人を二人殺した。」 「武器はひとつめのときは悪意で、もうひとつめのときはバトルアックスだった。」 もうこの書き出しが秀逸。恥の多い生涯くらい秀逸。 幼い少女と思いきや中学生くらいって実はオンナだしちゃんと自分の世界を持っている。 かと思えば、少女ならではの潔癖さとか不安定なところもある。 桜庭一樹は少女の生臭いところを書くのがとても上手です。 大西葵ちゃん十三歳は、離島というめちゃめちゃ田舎に住む平凡な❨そしてちょっと不幸な❩少女。もう一人の主人公は宮乃下静香ちゃん、葵ちゃんのクラスメイトなのにお金持ちで浮世離れした感じの、まさにラノベに出てきそうな少女。 葵ちゃんは陽キャ、静香ちゃんは陰キャ。一般的に中学ではあんまり話さないタイプです。 ところが、二人は一年間で二人も人を殺してしまうわけです。 というと、静香ちゃん主導かな?という感じがある。 しかし、彼女のキャラ造形は、大人びてて耳年増で雰囲気があるけど、そこまでの覚悟はないふつうの少女なわけで。 一方の葵ちゃんはどこにでもいるムードメーカーのヘタレちゃんと思いきや、バトルアックスを振り下ろす度胸があるわけで。 ふたりの少女が出会ったからこそ、少女たちは殺人者になってしまったのです。 ひとりめの被害者は葵ちゃんの義父でした。 なんで彼は殺されたのか。 葵ちゃんに対する虐待というほどもない虐待。 と、静香ちゃんの不器用な友情のせいでした。ふたりは異質ながら友情めいたものを芽生えさせているのです。 葵ちゃんはどこかで聞いたような家庭の問題をかかえていて、悲劇のヒロインというほどではない程度に不幸なのですが、中学二年生の少女の世界は狭く、ちょっとした苦しみへの逃げ場はありません。大人になって逃げ出す日なんて本当に遠いことです。だから殺すしかなかった。 けれど、ゲームや小説と違って殺したら終わりではない。 作品全体を覆う閉塞感の根源だと思います。 表紙や設定から、青春爽やか作品と見えて実は救いがない。けれど読後感は悪くない、不思議な作品です。 それは悪趣味なシーンがほぼないから?葵ちゃんが十三歳の潔癖な少女だから?桜庭一樹のゆめゆめしい文体だから? だからこそよけい、美しい情景描写と、殺人の現実性のギャップが強く印象に残ります。 晩夏の昼下がりに手を握りあって「しんじゃえ、しんじゃえ」と呟く少女たちのまぼろしを、いまでもたまに夢見るのです。 ぜひ一度、読んでみてください。
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NATSUMIKO♡
2021年10月30日
In 「東大卒、農家の右腕になる。」
去年から農業界で超流行っている本…というだけではありません。業種問わず、若きリーダーにおすすめしたい一冊です! 第一部は、筆者佐川さんが「農家の右腕」になるまでのストーリー。 東大で意欲的な活動をして、高い志を持って外資系に入社、2年目でプロジェクトリーダーに抜擢…あーハイハイよくいる意識高い系、と思いきや。 大きなつまづき、悩み、そして人生の転換となる「阿部梨園」との出会い、「阿部梨園」の経営改善… 詳細はネタバレになってしまいますので省きますが、ドラマチックでもあり、挫折を知らぬエリート青年が悩みながら成長する姿には共感してしまいます。❨そういう点も失敗図書館にふさわしい!?❩ そして、第二部は佐川さんが阿部梨園という農家の経営改善に取り組むなかで得られたノウハウをテーマごとにまとめています。 この第二部が秀逸!実際に行ったことや使ったツール、反応などを1~2ページにまとめ、テーマごとに見出しをつけてあるので 「経営改善の辞典」的に使えます。 プロジェクト運営なんか任されると、メンバーのケアからスケジュール管理から予算管理…と、広く浅くいろんなことに悩みますよね。 そこで、この生の改善アイディアをいろいろと提案してくれるコーナーが役に立つんです! 全部読むもよし、ピンポイントで今困っているところのヒントにするもよし。 正直、ビジネス書としてすごく目新しい内容が書いてあるわけではありません。 しかし、必要最低限の知識をやさしい筆致でまとめてある点、実際の経験が書いてある点で、本書はとても使いやすいのです。 本書は読者にあまり本を読まない方も想定しているためか、全編がとても親しみやすい文体で書かれており、ビジネス書が苦手な方でも読みやすいと思います。 新米リーダーのみなさんの入門書に、部下へのプレゼントに、教育の参考に、ぜひ! ❨ちなみに私は、職場で貸したら熱烈に気に入られてしまい、差し上げてしまったので自分用の二冊目を買いました…❩ 余談ですが、筆者佐川さんのWebサイトもとてもわかりやすく、なんと無料で経営改善ノウハウを見られるのでとってもおすすめです!❨https://tips.abe-nashien.com/❩
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