top of page

パレスホテル東京

パレスホテル東京

2022.05.04

丸の内1-1-1。
バルコニーから夕焼けに染まる皇居や富士山を眺めているだけで不思議と明日への活力が戻ってくる。このパレスホテル東京には、現代的で利便性を備えながらも土地に根差した日本らしさや格式がしっかりと感じられる。日本を訪れる世界の人達は、宿泊先にも一定の日本らしさを期待しているだろう。しかし、その期待に応えられるホテルはまだまだ少ないように思う。とくに京都がそうだ、外資系ホテルばかりが立ち並ぶことを地元の人達はひどく嘆いていることだろう。いまのところ、風情ある日本旅館に泊まることが京都においてはふさわしい選択なのではないだろうか。


このホテルを初めて訪れたときのことを想いだす———

「ご予約を確認いたします。」
「・・・本日のご予約でございますか?」
「ええ、なにか?」
「失礼いたしました。」
「・・・ご用意できております、直ぐにご案内をさせて頂きます———」

あの時、二人から予約に関して尋ねられたことを不思議に思っていたのだが、部屋に滞在していてカレンダーの日付を見たときにハッと思った。こちらの誤りに気が付かず大変申し訳ないことをしたのだが、それでも部屋をすぐに用意してくれたこと、お連れした方への配慮も含め、私はあの日ホテルから最高のホスピタリティを受けた。

私は、予約の電話の際に宿泊日の「月」を間違えて伝えてしまっていたのだ———

本来なら部屋などあるはずもない。とんでもない勘違いをしでかしていた私は、食事をした後、一人レセプションに立ち寄り詳しい事実を知った。あの時の恥ずかしさと笑顔で再度迎えてくれた二人のことを忘れることはないだろう。謝罪とともに、心からの感謝と(一か月後の)予約をそのままにしておいて欲しいと伝えたのは言うまでもない。

20年近くも前のことだが実際にあった話だ。この出来事があってから、現在のパレスホテル東京になってからも私はこのホテルを数十回と訪れている。しかしながら過度なVIP待遇を受けたことは今まで一度もない。テラスで食事をしながら本を読んでいるときも、パーティを企画したときも、宿泊しているときもだ。それでも、「我々は貴方のことを良くわかっています」というパーソナルな反応や空気感をスタッフからいつも感じている。それがとても心地よく、対等な関係にも心から満足している。

「ソワニエ/soigner(仏語)」という言葉をご存じだろうか?
私はこのホテルを訪れる際には必ずサロンで身なりを整えている。それがスタッフに対する感謝とリスペクトの証なのだ。クレームやトラブル、あの時のようなことは少なからずあると思うが、プロ意識と誠意ある対応を目にする度、彼らのことやホテルの成長を心から応援したいという気持ちになる。


京都のイタリアンレストランを訪れたときにもこんなことがあった———
誕生日の女性を連れてお祝いのランチをしていたのだが、デザートのタイミングになり突然私の目の前にバースデープレートが用意された。プレートに書かれていたのは私の名前でも彼女のものでもなく、、それを見た私たちは目を合わせてキョトンとした。

「頼んだの?」
「いや頼んでないよ、それに誕生日は僕じゃないでしょ。」
「しかも名前が違うし・・・」
「え、じゃあどういうこと?」

あまりにも突然の出来事であったため彼女も驚いていたが、少しして、そのプレートが誰のためのものなのか気が付いた。同日、同時間帯に誕生日のお祝いをしているゲストが我々を含めてもう一組いたのだ。何かの節に勘違いをしてしまったのだろう。席も比較的近くヒヤリとしたが、我々は、間違えて私たちのところにプレートが用意されていることをメモ書きにしてスタッフに見せた。そして、事なきを得て、改めてあの日二度目となるバースデープレートが正式なゲストのもとに用意された———

会計を済ませ、店を出たところで地元出身のシェフが私たちを呼び止めた。
カウンター越しに紅葉を見に訪れていた私たちの会話を聞いていたのだろう。そのお詫びとともに地元で穴場のスポットをわざわざ紹介してくれた。人がやっていることなのだからミスや失敗はつきものだ。しかしそれが逆に、私たちの満足度を高め、本当に忘れがたい旅の思い出を作ってくれた。彼女も喜んでくれたので、誠意をもって最後まで接してくれたお店にはむしろ感謝をしたいと思った。しかしながら、それから暫くはバースデープレートと聞く度、見る度にソワソワしたのは言うまでもない(笑)


ホテルの話に戻るが、
このパレスホテル東京には昔からの伝統料理がきちんと継承されている。ローストビーフやマロンシャンティイ、そして私の一番のお気に入りはケークオランジュだ。また、ロイヤルバーに行けば、初代バーテンダーが作ったマティーニやジンフィズが素晴らしい技術のもとに再現されている。それら一つひとつに、このホテルを育んできた人たちのこだわりや一期一会が受け継がれているのだ。訪れる人たちにとってはそれが付加価値となり、私たちにとっては学びの機会ともなる。新しいものや海外の流行りも良いだろう。だが、日本で永く受け入れられてきたものや時代と共に洗練されてきたものを知ることも今の日本人には必要なことなのではないだろうか。海外からのリスペクトを私たちはもっともっと知るべきだ。内側に目を向けること、それが伝統と格式を守り、世界からの期待に応えることにもつながっていくのだ。

国有国営として始まったパレスホテル東京をご紹介させていただいた。
私の拙い体験が日本を回帰する機会を生み出し、彼らとともに「日本らしさ」を世界に発信する一助となればとても誇らしく思う———


『パレスホテル東京』
〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-1-1
TEL 03-3211-5211
https://www.palacehoteltokyo.com/

美しい国の、美しい一日がある。
~Experience the Heart of Japan.~

パレスホテル東京
bottom of page