長崎県平戸市『囲炉裏料理エビス亭』
~クエ料理と南沢親方を訪ねて~

長崎県北西部に位置する平戸市———
海に囲まれたこの地域は、平戸島を中心に、大小およそ40の島々で構成され、古くはアジア・ヨーロッパの貿易港として栄えてきた。キリスト教伝来の地としても知られ、二つの世界遺産が登録されています。
城下町としての歴史ロマン溢れる異国情緒も魅力だが、
今回の我々のお目当ては、魚の王様である『平戸産天然クエ』である。九州地方では別名『アラ』とも呼ばれるこの高級魚は、1mを越える堂々としたその風格もさることながら、ここ平戸湾で一本釣りされたものがおそらく日本一だろう。
福岡から車で約2時間、
日本最西端の駅『たびら平戸口駅』を過ぎ、我々の目に飛び込んできたのは、朱塗りの平戸大橋と日本初の城泊で知られる平戸城だ。それはそうと、『失敗図書館』の企画とはいえ、レンタカーの手配をすっかり忘れるというお粗末な展開にも関わらず(笑)、この日は天気にも恵まれ、ともかく全員無事に到着することができた。
西側に位置する隠れキリシタンの島『生月島(いきつきしま)』や多くの直売所にも立ち寄り、温泉旅館で長旅の疲れを癒した後、期待のエビス亭へと向かった。

囲炉裏料理『エビス亭』———
まさに大人の隠れ家といった趣の古民家、玄関に咲く椿とスタッフが心温かく出迎えてくれる。
てっきり海沿いにあるのかと思いきや、車で少し登った河内峠の山あいにあった。所々にサインが用意されているが、夜に訪れる方や初めての方は気持ち早く出掛けたほうが良さそうだ。
クエ(九絵/中央)を描いた店内の壁掛け———
暖簾をくぐると立派な薪ストーブ、広々とした店内には
囲炉裏のある掘りごたつが用意されている。
陽が落ちると店内は暖かい照明の光に包まれ、ゆっくり
とした時間が流れる。普段味わえない雰囲気に全員の期
待がより一層高まる。


平戸の自然や海の幸に魅せられた南沢親方———
16歳から包丁を握る生粋の料理人である。
土地や素材のことを、愛情を込めて語る親方の表情は常に真剣そのもの。全員が一言一句に耳を傾ける。
良い食材を仕入れた際には、ご自身のチャンネルやブログでも積極的な情報発信を続けている。
クエの刺しが運ばれてくる———
丁寧に血抜きした生の肝、湯引きした腹皮が添えられ
ている。刺身はまったりと滋味深く、繊細な味わい。
言葉にならない。
同じく旬の寒ヒラメ、これもここへ来たら絶対に外せ
ない一皿だ。鰤、鯛、マグロにおいてもどれもが格別、
あっという間に平らげてしまった。平戸は多種多様な
鮮魚が採れるため、料理人とって『最上の土地』だと
いう親方の声にも納得。
