『まぼろし博覧会』
~夢か、うつつか、まぼろしか~
22/4/18
あるテーマパークが話題となっている———
2022年1月7日(金)にNHK総合「ドキュメント72時間」で放送され、瞬く間に日本全国に知れ渡った『まぼろし博覧会』。仕掛け人はツイッターでも話題の館長セーラちゃん。「能天気なパラダイス」「キモ可愛い」をコンセプトにしたこのテーマパークは、彼女の強烈なキャラも手伝い、ノスタルジックな昭和の時代を一目覗き見たいという若い世代を中心に人気が広がっている。
すでに閉鎖した古い遊園地のような外観からは、退廃的※(荒れて不健全なさま)でどこか人を寄せ付けない印象を受けるのだが、それでもどういう訳か、ニューカルチャーの聖地としてリピートする人は絶えないという。その理由は何なのだろうか―――
日本中から捨てられない物が大量に集められていることをみると、ここには様々な人の想いが夢うつつ※(ぼんやりと)残されているのだと思うが、わざわざ足を運ばなくとも、公式HPには展示品のほとんどが写真で公開されている―――しかし、そんなつまらない事を言えば、「昭和がわかっていない・・」と、どこからともなく聞こえてきそうな雰囲気だが、データ化されたものだけでは味わえない何かがここにはあるのだろう。タイムスリップしたような錯覚を体験するには、やはりここを訪れるしかない。
「大仏殿」エリアに展示されている仁王像―――
もともと植物園があった場所を改装しているそうだが、吹き
抜けの広々とした空間には、立つと?50メートルにもなる
世界最大の聖徳太子像をはじめ、古代文明の遺跡展示なども。
これだけならまともな印象なのだが、なぜか、隙間には埃ま
みれの雛人形や縁日屋台などが置かれていた。
「昭和の時代を通り抜け」エリアには大量のマネキンが———
戦前・戦後を中心に、昭和30年代頃を懐かしむことができる。当時流行したフィギュア、ゲーム機、箱型テレビなどが、アイドルや戦中ポスターとともに所狭ましと並べてあった。「チャンネルを回す」などと言えば昭和認定だが、誰もいないのを見計らいそっとつまみを回してみた。
「まぼろし島」エリアのジャポニズム舞台―――
もうここまで来ればカオスとしか言いようがない。なかには、
立ち尽くす入場者やこれまでに精神を削られ奇声をあげる人
たちも。拡大中の屋外エリアでは伊豆が一望できるのだが、
もはやそれどころではない。わけわかめ※(訳が分からない)
である。
館長のセーラちゃん———
同じ館長として、突き抜けた彼女に会えることを少しだけ期待したが、平日ということもありそれは叶わなかった。記念撮影のできるパネルが至るところに置かれてあったのをみると、やはり人気で多忙な毎日を送っているのだろう。写真集も発売しているそうだ。
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鬼畜ライターとして生きた村崎百郎の遺品を公開した未確認生物博覧会、メルヘンランド、閉館した秘宝館を再現したエリアなどがその後も続いたが、後半は放心状態でなにも考えることはできなかった―――
とてつもない脱力感と絶望感を感じたため心臓の弱い方やメンタルに自信のない方は無理をしない方が良いだろう。詰まるところ、なにかあると思っていたその何かとは、虚無感というか冒頭で述べた退廃感でしかない。夏に肝試しとして、お化け屋敷や心霊体験をするといった類のものとも明らかに異なる。もれなく思考停止し、その理由を探ることすら途中からできなくなった。
見向きもされなくなった物にまたスポットが当たるのは良いことだと思うが、退廃感という言葉以上の表現をすることは今回の私にはできなかった。パンドラの箱を開けるような怖いもの見たさで訪れるならそれも良いのかもしれない。非日常の体験には感謝しているが、おそらく再訪はないだろう———
『まぼろし博覧会』
~夢か、うつつか、まぼろしか~
〒413-0231 静岡県伊東市富戸梅木平1310-1
電話 0557-51-1127
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