「本日は、お日柄もよく」
著者の原田マハの作品は素晴らしいものが多いが
この作品は彼女の本を読んだことがあるからすると作風がガラッと違うため
驚かれることと同時にとはいえ彼女の紡ぐ言葉たちの温かさに癒されることだろう。
あらすじは以下のとおりである。
二ノ宮こと葉は、製菓会社の総務部に勤める普通のOL。
他人の結婚式に出るたびに「人並みな幸せが、この先自分に訪れることがあるのだろうか」と、
気が滅入る27歳だ。けれど、今日は気が滅入るどころの話じゃない。
なんと密かに片思いしていた幼なじみ・今川厚志の結婚披露宴だった。
ところが、そこですばらしいスピーチに出会い、思わず感動し、涙する。
伝説のスピーチライター・久遠久美の祝辞だった。
衝撃を受けたこと葉は、久美に弟子入りすることになるが…
タイトルと出だし、あらすじからいって、結婚式のスピーチに終始するOLのお話かと思ったら、
全く見事にいい意味で裏切られる
言葉が持つ力を最大限感じさせてくれる。
ここに作中にもある『スピーチの極意 十箇条』を引用する
1 スピーチの目ざすところを明確にすること
2 エピソード、具体例を盛り込んだ原稿を作り、全文暗記すること
3 力を抜き、心静かに平常心で望むこと
4 タイムキーパーを立てること
5 トップバッターとして登場するのは極力避けること
6 聴衆が静かになるのを待って始めること
7 しっかりと前を向き、右左を向いて、会場全体を見渡しながら語りかけること
8 言葉はゆっくり、声は腹から出すこと
9 導入部は静かに、徐々に盛り上げ、感動的にしめくくること
10 最後まで、決して泣かないこと。
作中にも深く染み渡ることばが多いが、下記の言葉を贈って締めたい。
“困難に向かい合った時、もうだめだと思った時想像してみるといい。
3時間後の君涙がとまっている。24時間後の君涙は乾いている。
2日後の君顔を上げている。3日後の君歩きだしている。”
読み終わったあと、あなたはきっと言葉を惚れ直しているだろう。
蒼山継人
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