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「虐殺器官」
著 者:伊藤 計劃
出版社:ハヤカワ文庫
発行日:2010/2/10
2022年3月22日
起こりうる現代における罪と罰
はじめてこの小説に出逢ったときの衝撃を忘れられない。
ことばを愛する人にはたくさん出逢ってきたが
この作者はことばから愛された人なんだと嫉妬を覚えた
ことばをひとつの人格まで昇華させている
だから、「わたしのことば」のように、
所有格としてことばを所有しているのではなく、
「わたしとことば」なのだ。
ことばと遊んでいる。その遊び方がわたしとは全く違うけれど
ことばの力を最大限引き出している。
ことばへの敬意と愛に感銘を覚えた。
随所に読みごたえのあるテーマや表現、哲学が散りばめられている。
ウクライナの情勢を鑑みるとまさしくこれからの未来さえも予見しているかのようだ。
あらすじとしては以下のとおりである。
9.11以降を舞台としており、
テロとの戦いのなかで先進諸国は徹底的な管理体制に移行した。
その一方で後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。
その背景として虐殺を扇動しているとされるアメリカ人ジョン・ポールの存在が浮かび上がる。
彼の目的はいったい何なのか?
アメリカ情報軍で特殊任務に就いていたクラヴィスはジョンの暗殺指令を受け、彼を追い続ける。
ようやくジョンと対面することができたクラヴィスは
「人間には虐殺を司る器官が存在し、器官を活性化させる“虐殺文法”が存在する」ことを聞かされる。
はたしてその器官とは、虐殺の文法とは…
まだ読まれてない方は、まずは手に取って
そのあとはハーモニーもぜひ。
蒼山継人
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