「嫌われる勇気」
著 者:岸見 一郎、古賀 史健
出版社:ダイヤモンド社
発行日:2013/12/13
2022年2月8日
ひとはいま誰でも変われて、幸福になれる
多くの方が絶賛した本書『嫌われる勇気』
この本ではないが、私がはじめてアドラー心理学と出逢ったのは高校生の頃であった。
当時も感動したが、いまだにその考えをきちんと理解し、落とし込み、実践しきれているかというとまったくそんなことはないため、改めてこの書評で整理し、再実践できたらと思う。
本書は心理学者「アルフレッド・アドラー」が提唱した
「個人心理学(アドラー心理学)」から対人コミュニケーションの極意を解説した一冊といえる。
精神分析学や心理学といえば、「フロイト」や「ユング」が有名であるが、世界的にはさらに「アルフレッド・アドラー」を加えて、「心理学の三大巨頭」と並び称されている。
本書の構成は非常に読みやすい形になっており、アドラー心理学を修めた哲学者である「哲人」と、対人関係を中心とした悩みを抱える「青年」のダイアローグ(対話形式)で、
アドラー心理学のエッセンスを分かりやすく解説するという形になっている。
人間は社会生活を営んでいく上で、
上司、部下との関係、家庭内(パートナー)の関係など、
いろいろな悩みを抱えている。
確かにビジネス、プライベート、様々なシーンにおいて、
抱えている悩みの種類は異なるようにも思えるが
しかし、これらの悩みについて、アドラーは次のように断言している。
「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」
そんなことはないと思う方にこそ、ぜひ読んでもらいたいが
他者の存在があるからこそ、悩みは生じてしまうのである。
たとえば孤独という一見個人の問題と思われる問題も、
「普通なら他の人とうまく付き合っていけるはずなのに、自分はできない」というように
社会・他者が存在しているからこそ生じるのである。
そのうえで、ではその他者とどう善き関係を築いていったら良いのかを本書では展開されている。
その出発点として「課題の分離」を挙げている。
「馬を水辺に連れていくことはできるが、水を飲ませることはできない」と格言があるように、コントロールできない他者である馬の課題を自身の課題にしないことが肝要である。
他にもキーとなる考えが多く含まれているのでぜひ一読いただきたい。
またアドラー心理学の中で特筆した概念が原因論ではなく目的論で捉えることである。
そのため、アドラー心理学はトラウマを明確に否定している。
こちらは少し解説するとたとえば、引きこもりの人を原因論で考えたとき、「不安だから、“仕方なく”外に出られない」と考えることができる。
だが目的論(アドラー心理学の考え方)では順番が逆となる。
つまり「外に出ないという目的のために、不安という感情を作り出す」と考えるのである。
もちろん過去のさまざまな出来事は、人格形成へと強く影響をあたえることは否定しないが、しかし大切なのは、それによってなにかが決定されるわけではないということである。
「いまのあなたが不幸なのは自らの手で「不幸であること」を選んだからなのです。」と、このように本書には一見厳しい言葉も散見されるが、逆に幸福であることを選べば、すぐに変われることを示唆しているともいえる。
ここまでの内容からもわかるようにアドラー心理学の影響力は強く、自己啓発の世界的ベストセラーとして古くから読まれている、デール・カーネギーの「人を動かす」やスティーブン・コヴィーの「7つの習慣」にも、影響を与えたといわれている。
「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と述べた
アドラー心理学では「「対人関係のゴールは共同体感覚」だと述べている
共同体感覚とは他者を仲間だとみなし、そこに自分の居場所があると感じられること。そのためにも他者に貢献することが大事であると述べられている。
幸いにもこの失敗図書館は、まさしくその共同体感覚を醸成できる場なのではないかと思えたことが今回の大きな発見でもある。
多くの人にとってそうであるようにまた貢献していきたい。
蒼山継人